しゃぼん玉
皆が喜びに溢れる中、シュンだけは違っていた。
シュンは、最初リクが宇都宮に出会った時の話を覚えており、それが嫌な感じで頭に残っていたため、この穏やかな雰囲気を壊した。
「たしかに建物はあるけど、宇都宮さんがここで働いてるかどうかも、確かめとこうぜ」
みんなは座り込んだままぎこちなく目を見合わせ合った。
ミズキは一番に立ち上がり、
「そうだね。
ここまで来たんだし、ちゃんと確かめよ。
きっと、宇都宮さんはここの人だよ。
それを裏付けるためにも、ね」
マナ、ナナセ、リクも立ち上がり、シュンとミズキについていくように、弁護士事務所への階段を上った。
階段を上った先に通路があり、その奥に弁護士事務所の扉が見える。
ミズキ達が扉に近付こうとすると、そこから眼鏡をかけた30代くらいの女性が出てきた。
ピシッと着用している彼女のスーツの胸元付近には、弁護士バッジが鮮やかに光を放っている。
シュンはその女性とすれ違い様に、
「あのっ!!
すいません!
……ここに、宇都宮誠二という弁護士はいますか?」
女性は忙しそうな足を一瞬だけとめ、
「宇都宮誠二……?
人違いじゃないかしら。
うちにはそういう名前の弁護士はいませんよ」