しゃぼん玉

それからすぐ、宇都宮は一方的に電話を切ってしまった。

シュンはリクにそっとケータイを返すと、

「今から穂積んちに行こう。


宇都宮に直接話訊きたかったけど、あいつはこれ以上話してくれそうにない。

それに、穂積の母さんが絡んでるなんて言われたら気になるしな」

「そうだね……。

宇都宮さんの正体はわからないけど、おばさんに聞いたらわかるかもしれないもんね……」

リクは泣きはらした目で、力無く同意した。

リクだけではなく、マナ、ミズキ、ナナセの頭も混乱している。


メイの母親は、宇都宮に何を頼んだというのか。

宇都宮の『これ以上詮索しない方がいい』という言葉には、どういう意味が込められているのか。

今回の件には、宇都宮が『どんな結果になってもいいのなら』と言い残すくらい、掘り起こすと最悪な事実が眠っているとでもいうのか。


みんながそれぞれに考えをめぐらせていると、この重々しい空気を裂くように、明るい着信音が鳴り響いた。

ミズキのケータイだ。

「アイリちゃんだ!!

電話なんて、どうしたんだろう……」

状況が状況なだけに、今この電話に出てもいいのかどうか迷ったが、

「出てみなよ。

電話してくるなんて、緊急の用事かもしれないし」

というマナの言葉で、ミズキはアイリの電話に出ることにした。

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