しゃぼん玉
漂う脱力感の中で、メイとリクは黙ってメグルの話を聞いていた。
メグルは、自分のような家庭環境の子が周りにいなかったのもあり、今まで、家族のことは誰にも話せなかった、と言った。
メグルの話が終わってからは、誰も口を開くことがないまま、一同は滝川家に到着する。
メグルは、沈んだ顔のリクを元気づけるように、
「ここまで送ってくれてありがとね。
メイのことはあたしに任せて?
リク君も、帰ったらすぐ風呂入んなよ?」
リクは「うん」という返事と共に大きなクシャミをした。
メグルがそれを見て朗らかに笑う。
そのおかげで、リクの気持ちは少しだけ明るくなった。
「メグルちゃん、ありがとう。
俺とメイのこと、止めてくれて。
帰ったら、ちゃんと親と話してみる。
メイのこと、お願い……」
「任せなっ!」
メグルは得意げにウィンクしてみせた。
こわばっていたリクの表情も、それにつられて少しだけ緩む。
最後にリクは、伏し目のメイを見て、
「風邪ひくなよ?」
メイは何の反応もしなかった。
メグルの視線を背中に受けながら、リクは自宅に走った。
両親と話をするために。