しゃぼん玉
「アイリちゃん……」
アイリの言葉やそこから放たれるものを、ミズキはゆっくり消化しようとした。
ミズキの立場を理解しようとしながらも、彼女はマサヤを信じたいのだろう。
ミズキにもそれはわかっていた。
もし仮に、今、誰かから「ナナセは昔、凶悪犯罪をしていた」なんて話を聞かされても、ミズキは納得などできない。
「私は大丈夫だよ、アイリちゃんの気持ちもわかるから」
ミズキがそう言おうとした時、思わぬ声が飛んだ。
ナナセがシリアスな顔つきで、静かに話し出す。
「アイリちゃんの気持ちも分からなくはないけど、どんなことがあっても、どんな環境にいようとも、マサヤ君がリョウ君を痛めつける理由にはならないよ」
「ナナセ君……」
ミズキとアイリの声が重なる。
アイリは弾かれたようにナナセを見る。
そこには、ジムで優しく話を聞いてくれていた時とは違う雰囲気をまとった、険(けわ)しい表情のナナセがいた――。
ミズキとアイリは、息をのむ。