しゃぼん玉
ミズキはそんなアイリの心情を察し、ナナセの言葉を止めようとする。
「ナナセ君、ありがとう。
私は平気。
アイリちゃんもいろいろあったばかりで、気持ちがついていかないんだよ、ね?」
アイリの震えをなだめるように、ミズキは彼女の肩を抱きしめた。
「アイリちゃんもつらいのに、リョウの話ばかりして、ごめんね」
アイリは小さく首を振る。
ナナセは切なげな表情で、二人を見ていた。
“良くないよ、ミズキちゃん……。
絶対、無理してるよね?”
もちろんナナセも、アイリのことは心配だったが、それ以上にミズキのことが気がかりだった。
ミズキが、リョウのことを引きずり、長い間苦しんできたことを知っているナナセ。
弟の死がもたらした暗い心の闇を光に変えるために、ミズキは日々、健気に生きている。
苦しみや悲しみを吸収し、人を笑顔にさせようという努力を惜(お)しまない。
ミズキは、そんな儚(はかな)くも強い心を持った、優しい女性だ――。