しゃぼん玉
一気に様々な出来事に直面し、皆、口には出さないが疲弊(ひへい)している。
今日は話すのをやめた方がいいと判断したミズキは、アイリを入浴させることにした。
ナナセとアイリは、気まずい沈黙状態のままミズキについていく。
ミズキは、二人の気配やぎこちない空気を背後に感じながらも、いつもの足取りでバスルームに進んだ。
白を基調とした浴室。
バスタブに熱い湯をはり、入浴用のアロマオイルを数滴落とした。
ラベンダーが肉体と心の痛みや緊張を癒し、イランイランは傷ついた気持ちを鎮(しず)め、高揚感を与えてくれる。
ミズキも、心が疲れて苦しい時に、よくこのアロマオイルに頼っている。
この空間いっぱいに広がるアロマの香りに、アイリは頬を緩ませた。
「私、初めてだよ、アロマオイルのお風呂」
と、目を輝かせている。
ミズキは嬉しそうに笑(え)むと、着替え一式をアイリに手渡した。