しゃぼん玉
このノートに綴(つづ)られた文字の大きさは大小まばらで、所々、水滴で紙面がよれていた。
リョウはきっと、涙をこぼしながらこれを書いたのだろう……。
ミズキは、リョウの気持ちを想うと胸が押し潰されそうになり、暗い気持ちでそのノートを見つめ続けていた。
両親の大成と菜月には、これを見せていない。
このノートの事を知っているのは、ミズキと同じ大学に通う親友のマナと、
付き合って半年になるミズキの彼氏、東藤ナナセ(とうどう·ななせ)だけ。
リョウがイジメを理由に自殺したということは、校内の噂や親同士の情報網で明らかとなった。
だが、このノートに書かれている内容は、大人達や当時のリョウのクラスメイトでさえ、誰も知らないだろう。
この手記に書かれた行為をした者達を除いては……。
リョウが亡くなった後、ミズキは独自に動き、リョウをイジメて苦しめた犯人を探そうとしたが、結局、見つからなかった。
リョウのクラスメイトは、どの子を見ても皆普通の子で、
“リョウをイジメました”と名乗る者など一人もいなかった。
その顔ぶれの中に、穂積メイもいたのだ。
犯人が見つからなかったのは、自分が鈍感だったせいだとミズキ自身は思っていた。
だが、本当にそうなのだろうか??