しゃぼん玉

メグルは冷たくなった清の手を触り、もう片方の手でポケットの中をあさった。

そこから、とある銀行の名前が印刷された白い封筒を取り出す。

「本当は、生きてるばあちゃんに渡したかったけど……。

天国で使ってね」

それは、最近初めてもらったバイト代。

お金の入った封筒を、メグルは清の胸元に置いた。

「ばあちゃん……。

今までありがとう。

あたし、ばあちゃんの孫で本当に良かった……。

18年間、とっても幸せだったよ」


メグルの後ろ。

メイはずっと、ミズキの手をにぎっていた。

メグルのように、清にかける言葉が出てこない……。

何も言えず、メイは花だけを柩に納めた。


初めて愛を語ってくれた、大切な人……。

メイは静かに涙を流して、柩から離れた。



その後、近くの火葬場で清は空にのぼっていった。

昨日とは打って変わって、よく晴れた青空。


ミズキは、リョウの葬儀をもう一度体験しているような悲しみを覚えた。


火葬場の煙突から出る細長い煙を見た瞬間、

メイは初めて、人の死の意味を痛感した。

リョウが亡くなったこと。

自分が死を選ぼうとしていたこと。

その全てがとてつもなく悲しいことなのだと知った。


人の命には限りがあると言った清の顔が浮かび、視界がにじむ。

メイの自殺を必死に止めたメグルと清。

二人の行動の意味は、とても大きかったのだと気付く……。

< 809 / 866 >

この作品をシェア

pagetop