しゃぼん玉
メグルは冷たくなった清の手を触り、もう片方の手でポケットの中をあさった。
そこから、とある銀行の名前が印刷された白い封筒を取り出す。
「本当は、生きてるばあちゃんに渡したかったけど……。
天国で使ってね」
それは、最近初めてもらったバイト代。
お金の入った封筒を、メグルは清の胸元に置いた。
「ばあちゃん……。
今までありがとう。
あたし、ばあちゃんの孫で本当に良かった……。
18年間、とっても幸せだったよ」
メグルの後ろ。
メイはずっと、ミズキの手をにぎっていた。
メグルのように、清にかける言葉が出てこない……。
何も言えず、メイは花だけを柩に納めた。
初めて愛を語ってくれた、大切な人……。
メイは静かに涙を流して、柩から離れた。
その後、近くの火葬場で清は空にのぼっていった。
昨日とは打って変わって、よく晴れた青空。
ミズキは、リョウの葬儀をもう一度体験しているような悲しみを覚えた。
火葬場の煙突から出る細長い煙を見た瞬間、
メイは初めて、人の死の意味を痛感した。
リョウが亡くなったこと。
自分が死を選ぼうとしていたこと。
その全てがとてつもなく悲しいことなのだと知った。
人の命には限りがあると言った清の顔が浮かび、視界がにじむ。
メイの自殺を必死に止めたメグルと清。
二人の行動の意味は、とても大きかったのだと気付く……。