しゃぼん玉
「……隠してごめんね。
メイちゃんを傷つけたくなかった。
これはウソじゃない」
「うん……。
あの人と、何話したの?」
メイを抱きしめる力を強め、ミズキは話した。
翔子が来年、再婚すると言っていたことを。
“こんなこと、教えたくなかった”
メイは落ち着いていた。
ショックを受けるでもなく、怒るでもなく、ミズキの話に耳を傾けている。
翔子への怒りで興奮しているミズキと違い、メイは淡々とこう語った。
「何となく、そんな気はしてた。
あの人、私にしょっちゅう言ってたから。
『あんたがいなきゃ、好きな男と結婚して幸せになれるのに』って。
私がいなくなったら、すぐにでも誰かと結婚するだろうとは思ってた。
今までも、結婚できそうな男いろいろいたらしいけど、皆、私の存在知ると逃げちゃったんだって。
そのたび、殴られてたっけなー」
「もう、そんな思いさせないからね……!
この家には、メイちゃんのことを殴る人は一人もいないから。
メイちゃんは、邪魔者なんかじゃないから」
他人事のように翔子のことを話すメイが、可哀相で仕方なかった。
ミズキは、メイの体を思いきり抱きしめる。
翔子の存在が、悔しくて悲しくて……。
もっと早くメイと出会っていたかったと、ミズキは強く思った。
「あの人と話したことは、本当にそれだけ?」
メイの鋭さを前に、ミズキはもう、正直に話すしかないと思った。
メイを本当の家族だと思っているのなら、なおさら……。
メイの実の父親が、彼女にしていたことを知った、と――。