しゃぼん玉
動揺を隠せず、メイの声は少し震えた。
「そっか。そこまで知っちゃったんだ……」
「ごめんね……」
ミズキは謝ることしかできなかった。
触れられたくない心の奥に、土足で踏み込んでしまったような気がして。
メイはミズキを責めず、翔子に怒りを向けることもなかった。
「ミズキが謝ることない……。
あの人は、私を嫌う理由が欲しかったんだと思う。
私を産んで育てた自分に、言い訳をしたかったんだよ」
「メイちゃん……」
メイは涙を流し、静かな口調で今の気持ちを口にした。
「分かってたから。
あの人と私には、血のつながり以外何もないんだってこと。
実際、こうしてあの人と他人になっても、あの人に対して執着心が湧かないのがいい証拠でしょ。
あれで良かったんだよ……。
中途半端に親ぶって可愛がられてたら、私はこうしてミズキの妹にはなれなかった。
養子に出された時、もっとつらかったと思う」
「でもっ……」
“しゃぼん玉の思い出は……?
翔子さんに……お母さんに、褒められたんでしょ?”
そう言おうとして、ミズキはやめた。
止まらぬ涙で言葉が出てこない……。
メイはミズキの気持ちを読んだように、こうつぶやいた。
「……しゃぼん玉には、リョウとの思い出があるし……。
それに、料理はお母さんとミズキが教えてくれるから。
お父さんは、ずっと憧れだったこづかいくれた。
……ばあちゃんが私にマフラー作ってくれた時に、血のつながりってあまり関係ないんだなって思えたから」