しゃぼん玉
「あの人のこと大嫌いだったけど……。
ムカつく、嫌い、死ねばいい。
そう思うくらい憎かった。
でも、やっぱり愛されたかった……。
毎日一緒にいたのに、全然好きになってもらえなかった……。
一緒に料理とかしたかったのに、あの人は私のこと『どんくさい』って決めつけて、何もやらせてくれなかった」
「うん」
「宇都宮には、裏切られたと思った。
ちょっとでも他人を信じた私が馬鹿だった……!
宇都宮がヤバい奴って知ってから、人を信じるのがもっと怖くなった。
昔から知ってるリクや、ずっと気にかけてくれたメグルのことも、全部は信用できない……。
ミズキのことも、全部は信じてない」
「うん」
「でも、清ばあちゃんの言葉を信じた時、すごく楽になった。
人を信じるって難しいけど、信じるっていいことなんだって初めて分かった。
これからそういう人になりたい……。
でも、私には無理って思う」
「うん」
「リクの告白、本当は嬉しかったのに、結局は遠ざけた……。
私、体にいっぱい傷があるから……。
殴られたのとか、ヤケドの痕(あと)も……。
父親にも、まともに愛してもらえなかった。
そんな私がリクに愛されてるなんて、信じられない……」
「うん」
「愛されたい……。
ミズキみたいに、メグルみたいに、清ばあちゃんみたいに、なりたい……。
うぅ……」
メイはそのまま泣き続け、そのうち眠ってしまった。
その頃にはもう、夜が明けていた。