しゃぼん玉

南に上った太陽の光があたたかく降り注ぐ和室。

リクは、一歩一歩、ゆっくりメイに近づいた。


「メイ。これ、誕生日プレゼント」

「……」

メイはおずおずとその包みに手を伸ばす。

リクはかすかに頬を染め、指先で鼻をかいた。


「メイと出会えて、18年になるんだな……」

「うん」

メイは包みを抱きしめたままうつむく。

「メイ、知ってる?」

「……?」

メイは視線の色だけで尋ねる。

「しゃぼん玉って、飛ばした分だけ幸せになれるんだって。

毎日やれば、毎日幸せになれる。

つらい時にしゃぼん玉を吹くと、そういうマイナスの感情全部、空が吸い取ってくれるんだって」

「……」

「一緒にやろ?

メイの思い出、しゃぼん玉でいっぱいにしよ!!」


そのあと、ミズキが用意した料理やお菓子でメイの誕生日祝いをし、

ベランダに出て、リクがメイに贈ったプレゼントのしゃぼん玉セットで遊んだ。


抜けるような蒼い空に、たくさんの丸いしゃぼんの玉が浮いていく……。

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