しゃぼん玉
ミズキのしゃぼん玉も、
リクのしゃぼん玉も、
あの日リョウがメイと一緒に飛ばしたしゃぼん玉と同じように、壊れることなくゆらゆらと風に乗って遠ざかっていった。
メイも、黄緑色をしたプラスチック製の細長い筒に、ゆっくり息を吹き込んでみた。
すると、まるでメイの想いを運ぶかのように、丸くはかない円が、淡い水色の空気に舞っていく。
その様が、切ないようで悲しくて……。
様々な想いが重なり、メイの頬には一つだけ涙がこぼれた。
幸せを願って、ひたすら吹き続ける。
“幸せになりたい……。
愛されたい……。
いつか、家族を、友達を、信じられる人間になりたい……”
そんなたくさんの願いと、忘れたい過去を乗せる。
しゃぼん玉は、優しく優しく、綺麗な色をして空にのぼっていく。
リョウの想いを乗せて。
ミズキの未来を乗せて。
メイの願いを乗せて。
リクの心を乗せて。