恋心屋
◆おさななじみ

恋心屋あらわる


「ミツキと呼んでください」


その女性はか細いながらも、しかしはっきりと聴こえるように告げた。


年齢はよくわからないが、たぶんそんなに離れてはいないとおもった。


「僕は裕太です」


そう告げると、僕は目の前のジュースに手を伸ばした。


まだ会ったばかりなのに、のどがカラカラとしてきた。


僕たちのほかには、客はいないようだ。


オーナーもいないし、いるのは若いバイトの女性だけだった。


たいして仕事もなさそうなのに、かっこうだけは働いているんだといわんばかりにしているようにみえた。


「それで、正式な契約として理解してよろしいですか?」


ミツキさんは、うながすように僕をみた。


黒い瞳で、吸い込まれそう。


綺麗な女性とは、ミツキさんのようなひとなんだろう。


「ホントに無料でいいんですよね?」


そう言うと僕はポケットから綺麗にたたんだ紙を、テーブルの上に広げた。
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