恋心屋
鏡を何度も気にした。


鏡を見ながら、クラスメイトの男子が休み時間中に、昨日はアイツと…、と彼女がいない男子に半ば強調するように言っていたのを思い出した。


中学生ともなれば、付き合うのも当然だと言いたいために。


そして、彼氏彼女になったひとたちは、ほとんど例外なく、じぶんの姿がどのように見られているかを気にするようになる。


もちろん、それは学校の中でも同じだった。


もともと容姿が平均より良いのに加えて、髪型や学生服の内に着るシャツにちょっとしたアクセントをするのが「彼氏」としての条件らしかった。


ただ、表面的なじぶんだけで、他者からじぶんがどのように見られているのかを気にしているひとは、いなかったような気がする。


羨望のまなざしで見られながら、優越感に浸っている「彼氏」たちは、俺はお前たちよりよりも「大人なんだぜ」といわんばかりの表情になっている。


かわいいと言われ、恥じらいながらも周りの目を気にする「彼女」たちは、強い否定も肯定もせずに、それでも心地よさそうな表情を浮かべている。


あまり好意は持てなかったが、今になって気持ちがわかった気がする。
< 11 / 81 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop