恋心屋


そうして溜息をついていると、後ろに気配を感じて振り向いた。


そこには、渡辺先生がじーっとこちらを見るような、僕の後ろを遥か見るような、あいまいな焦点のままで立っていた。


僕がまっすぐに見据えると、先生の方から話しかけてきた。


「西田、何をやってるんだ。こんな寒いところで」


先生こそ何でこんなところにいるんですか、とおもったが、あえて言わず、


「ただ、青春を感じてみたくなって」


といい加減に声が出た。

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