恋心屋
「お待たせしました」
ミツキさんは白い息を不規則に吐き出している。
急いできたことがわかる。
僕は座っていたところをずれ、その場所にミツキさんを座らせた。
すみません、ということばに、かすかな安堵が込められている。
「近くに用事でもあったんですか?」
「まあ、たまたまですね」
やはり不思議なひとだ。
そんな不思議なひとに、じぶんから特別な感情が涌き出ているのがわかる。
会って間もないし、情報だって不明なところも多いのに。