恋心屋
「冬の月夜はいいですね。寒いけれど、記憶にのこるもの。そして、とてもなにかにあこがれ、夢想する。私の場合は変なことばかり考えてしまいます。だから、一人で過ごしているよりも、この気持ちをだれかと分かち合いたい、とつぜんおもうの」
「はい……」
僕もそのことを考えていたんですよ、ミツキさん…。
どうして僕の考えに入り込めるんですか。
それは僕に合わせたお芝居?
それとも本物のミツキさん?
……いや、本物なんて、どこにあるんだろう?
僕だって、「ここ」に本物があるわけじゃない。
探したところで、見つかりはしないだろう。
本物も虚構に過ぎない。
でも……、とおもう。