恋心屋

「冬の月夜はいいですね。寒いけれど、記憶にのこるもの。そして、とてもなにかにあこがれ、夢想する。私の場合は変なことばかり考えてしまいます。だから、一人で過ごしているよりも、この気持ちをだれかと分かち合いたい、とつぜんおもうの」




「はい……」





僕もそのことを考えていたんですよ、ミツキさん…。



どうして僕の考えに入り込めるんですか。



それは僕に合わせたお芝居?



それとも本物のミツキさん?






……いや、本物なんて、どこにあるんだろう?



僕だって、「ここ」に本物があるわけじゃない。



探したところで、見つかりはしないだろう。



本物も虚構に過ぎない。





でも……、とおもう。

< 77 / 81 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop