トツキトオカ
吐く一方、私はよく食べた。

何も食べられないつわりとはまた違ったようで、食べられる物と食べられない物とが出てきた。

まず駄目なのが白いご飯や味噌汁、魚料理全般。

いわゆる和食である。

大好物の明太子も食べられない。

単品で言うとにんにく、アボカド、卵、ヨーグルトなども食べられなかった。

つわり対策によく聞く、トマトやそうめんも「おえ~」メンバーだ。

反対に大丈夫だったのはチャーハンやピラフなど、味のついているご飯。

カレーライスにすると白いご飯も何とかイケた。

そうめんは駄目だったが味の濃い担々麺やパスタは食べられた。もちろん、カレーうどんも。

空腹になると気持ち悪くなるので小分けにしてちょこちょこ食べていたが、お腹いっぱい食べてしまうとそれはそれでまた気持ち悪い。

とにかくこの時期はよく食べたしよく吐いた。

口の中をさっぱりさせたくて柑橘系のグミや飴を大量に買い込み会社の引き出しに常駐させた。

妊娠すると酸っぱい食べ物が食べたくなるというのはこういうことかと納得し食べ続けたが、今はレモン味のグミを見るだけでつわりの気持ち悪さを思い出してしまい、ちょっとしたトラウマになっている。

夕食の支度も出来ずに毎日デパ地下かコンビニのお弁当が続いた。

こうなって初めて気が付いたのが、いかにテレビのグルメ番組が多いかということ。

とにかくテレビを付けると何かしら食べ物が写っている。

コマーシャルになっても食べ物、食べ物のオンパレード。

しばらくテレビも楽しく見られなかった。

ついでにここ数ヶ月、微妙な顔立ちが何とも言えず気に入っていたちょっと「きもかわ」キャラクターを見るだけでも吐きそうになってしまった。

とにかく朝起きてから夜寝るまでずっと気持ちが悪い。

座ろうが横になろうが治らない。

まさに「寝ても覚めても」といったところだ。

何が辛いって、この状態がいつまで続くのかがわからないのが何とも辛かった。

二日酔いなら酒が抜ければ治るし、病気なら病院へ行って薬を飲めば治る。

でもつわりはそうはいかない。

ただ耐えるしかないのだ。

周りからの「安定期に入る頃までの辛抱だよ」という励ましと「出産直前までつわりが続く人もいるんだって」という脅しとをもらい、仕事も休み休みになりながら毎日を過ごした。

どうでもいいことだが、よく「吐きづわり」「食べづわり」など耳にすることがあるが、私の場合どちらでも無くどちらとも当てはまった。

ので自分の中で今回のつわりは「偏食づわり」だったことにした。


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