トツキトオカ
いや、でも破水って「バシャッ」と足元に水たまりができるイメージだよね、これは違うよね…?

私はインターネットで「破水」を検索してみた。

すると「テレビドラマでよく見るような大量の水は出ません」との説明が。

途端に胸がざわざわと不安の音を立て始め、夫に相談した。

「違うかもしれないけどもしかしたら破水なのかも」

私は夫の指示に従って病院に電話してみることにした。

名前と妊娠週数を告げ、状況を説明すると電話口の助産師さんは「入院の用意はしてありますか」と言った。

ドキリ。

もちろんいつ産気付いても大丈夫なように入院セットは用意してあるが、まさか本当に今日入院?

助産師さんは一応入院の準備をしてこれから病院に来て下さいと言った。

そのまま入院になるかは診察してみないとわからないが、なるべく急いでとのこと。

私は電話を切り、「わぁーっ」と奇声を発しながら夫の待つリビングへと駆け込んだ。

「入院セット持ってこれから来て下さいだって!」

私たちはその場をぐるぐると駆け回った。

どうしよう、どうしよう。

入院準備はできているけど心の準備ができていない。

しかも今日は誕生日なのに!

私は急いで寝室へ行き部屋着からワンピースに着替え、身支度を整えた。

その間にも例の「ジョボッ」が数回。

ヤバいよ、完全にキテるよ。

荷物をまとめてリビングに戻ると、夫がテーブルの上にさっき買ってきたケーキを並べている。

「そのまま入院になったらパーティができなくなるから、ケーキだけちょっと食べてから行こ」

夫はにこにこ笑ってそう言った。

私はキャッと喜び、夫と一緒に少し慌てながらハロウィン限定のカボチャプリンとチーズケーキをひとつずつ食べた。

そして荷物を持ち、お尻にタオルを敷いて車の助手席に乗り込んだ。

病院へ向かって夫が車を走らせている間も、何度か「ジョボッ」の感覚は続く。

夫は私を落ち着かせようとしているのか「きっと今日は入院にはならないよ」と繰り返し言っていた。

私はそうだねと言いつつ心の中では「いやーこれはダメっしょ」と、このまま入院になるだろうなと感じていた。

そして私は昨夜見たお笑い番組のことを思い出した。

爆笑して「生まれる~」と叫んでいた昨日。

もしやあれが破水を招いたんじゃ・・。

いやいや笑いすぎで出てきた赤ちゃんなんて聞いたことが無い。

と言いつつもやっぱりあれが原因としか思えない。

うーん。

予定日間近のお笑いは危険だ。

どこまでもギャグっぽさがついてまわる私の人生。

小僧、無事に出てきてね。
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