Vrai Amour ~秋緒の場合~
「帰れよ。二度と来るな」
必死にそう言葉を紡ぐ。
俺と結婚したっていいことなんか何もない。
俺は「愛」なんてわからないんだ。
心の底から求められたことなんてない。
咲子だって同じだ。
そんなのとっくに諦めたことだったのに・・・・
思わず涙がこぼれてしまいそうになるのを、唇をかみ締めて我慢する。
俺は、父親に捨てられ、母親にも捨てられ、ずっとじいさんに育てられてきた。
両親の顔なんて知らない。
家族の愛情も知らない。
その俺が結婚・・・?
笑っちまう。
親の愛情を知らない子供がどうやって、親になれというんだ。