Vrai Amour ~秋緒の場合~
俺は自分の名前に芽生え始めた切ない感情を千夏にぶつけたくなる。
でも、千夏はまだ16だ。
きっとキスだって初めてだったはず。
そう思いながら、千夏の背中に腕を回して優しく抱きしめてやった。
「服、着ろよ」
俺はシーツを千夏に巻き付けると、床に落ちている服を拾い集めた。
「え?」
あっけに取られている千夏の隣に腰を下ろし、千夏の額に自分の額を合わせた。
「お前がガキじゃないってことはよくわかった」
「・・・・」
「でも、今日初めて会ったばっかだし、お前のこと俺はよく知らないし」
「・・・・」
「・・・他にもいろいろやらなきゃいけないこともあるし」
「あ・・・」
そう言うと、千夏は嬉しそうに目を輝かせた。
「・・・いきなり結婚じゃなくて、恋人、から始めるとか、どーよ?」
俺はなんだか恥ずかしくなって、少しおどけたように言う。
「い、いいの?」
最初に会ったときのあの強気はどこへ行ったやら
苦笑で返すと、千夏は嬉しそうに俺の首筋に抱きついてくる。
「つーか、断ったのに追いかけて来たの誰だっけ」
まったく、俺も何やってんだか。
思いっきり嫌がらせして嫌われようと思ったのに
興味もっちまうなんて・・・