Vrai Amour ~秋緒の場合~
病院にかけつけてきたのは執事の朝比奈だった。
いつもは俺がいるときですら、あのマンションに同行しているのだが、今朝は咲子一人だった。
朝比奈は咲子が桐島家の代々の執事で、年は咲子よりも3歳年上の幼馴染でとても仲が良かったと聞いている。
「お、奥様は・・・」
走ってきたのか、朝比奈ははーはーと息を吐きながら俺の前まで来ると、背筋を伸ばして言った。
「中・・・急性胃腸炎だって」
朝比奈が病室に入ったのを見届けると、俺は病院をあとにした。
その青ざめた表情に俺はすべてを悟ってしまったのだ。