Vrai Amour ~秋緒の場合~
「奥様・・・・」
朝比奈は静かに眠りについている咲子の青白い手を握った。
すっかり冷えてしまった指先を両手で包んであたためる。
自分より小さな手を握ると、まだ幼かったころの奥様を思い出した。
3歳年下で、おとなしかった奥様はとても泣き虫で
幼馴染だった私が執事になってもなかなか苗字では呼んでくださらず
いつまでたっても兄妹のようだと大奥様にも心配されていた。
奥様の気持ちを知りながらも答えてやれない立場でありながら
まだ奥様を想う気持ちは変わってはいない。
政略結婚だったとは言え、とても幸せそうな奥様を見ているのは
とてもつらかったけれども、これでいいのだと妙に納得もしていた。
なのに、今は・・・・