Vrai Amour ~秋緒の場合~
俺は、何も言えなくなってしまった。

咲子と関係を持って、もう10年近くなる。

俺はただその行為に溺れ、咲子は何かを俺で満たしていた。

それをずっと、あいつは黙って見ていたってことだ。



「なんで・・・・っ・・・」


俺はずっと朝比奈の代わりだったってことか・・・・?

怒りのような、悲しみのような複雑な気持ちに言葉を失う。


「お前もいい大人になったんだ。潔く身を引いてあげなさい」


素直にはい、とも言えず、俺は無言で立ち上がった。

ふらふらと歩き出し、自分の車に乗り込む。



時計を見るとちょうど16時半だった。
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