Vrai Amour ~秋緒の場合~
助手席に放り投げた携帯を拾い、女ばかりの電話帳の中から千夏の番号を表示させる。

通話ボタンを押すと、すぐに呼び出し音が鳴り始めた。



『も、もしもし?秋緒?どうしたの?』


少し照れたような声が受話器越しに聞こえてくる。



「用がなきゃ電話しちゃだめか?」


『う、ううん、そうじゃなくて・・・なんか元気ないね』


「・・・会いたい」


気がつけばそう言っていた。

10年間咲子にすらそんな言葉を口にしたことはなかったのに・・・



『え!?じゃ、じゃあ一度帰って、着替えて・・』

「待てない。迎えに行く」



それだけ言うと、千夏の返事を聞かずに携帯を閉じ、再び助手席に放り投げた。
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