Vrai Amour ~秋緒の場合~
「・・・仕事もちゃんとする。結婚はすぐじゃなくて、ちゃんと俺からプロポーズするから」
これから俺は変わるんだ。
そう思ったら、急に心が軽くなった。
絡まった糸がほどけていくように重くうずまいていた黒いものはすっきりと消え、代わりにあたたかい光のようなものが灯る。
「・・・ほんと・・・に・・・?」
見開いた千夏の瞳から大粒の涙がこぼれた。
今度は俺がその涙を拭いてやる番だ。
「・・・ああ、だから最初からやり直そう?」
涙を親指で拭うと、千夏はとても幸せそうに微笑む。
「返事は?」
「うん」
俺はむしょうに千夏が愛しくなって、前髪にキスを落とした。
それからまぶた、頬、最後に唇に触れるだけのキスを落としていく。
「な、なんか・・・」
「ん?」
「優しいのってくすぐったい」
千夏は嬉しそうに笑いながらも照れていた。
「じゃあ、もっといじめたほうがいい?」
ちょっとだけ意地悪を言ってみると、千夏は慌てて首を振った。
「・・・優しくして」
そう言って、頬を染めて俯いた千夏は出会ったときより何倍も可愛く思えた。
「今のちょっとエッチだな」
「あっ・・・やだ、そういう意味じゃなくてっ」
顔を真っ赤にして慌てて否定する千夏も可愛い。