Vrai Amour ~秋緒の場合~
小早川秋緒
これが、俺の新しい名前。
ここからまた新しい人生が始まる。
「おめでとう、秋緒」
その声に振り返ると、シックなワンピースに身を包んだ咲子がいた。
隣には朝比奈もいる。
「咲子・・・」
「招待ありがとう。とってもかわいい花嫁さんね」
千夏のことは見合いの写真を見て知っていた。
だけど、千夏が咲子のことを知っていたということは言っていない。
「・・・今、どうしてる?」
そう尋ねると、咲子は少し頬を染めて朝比奈を見上げた。
「・・・桐島の家は全部恵に継がせて、私は朝比奈の姓になったの」
恥ずかしそうに頬に手をやるその左手の薬指には二人おそろいの結婚指輪が光っている。
30年経って、ようやく恋を実らせた二人はまるで中学生のように照れている。
そのほほえましい様子に、俺はとても安心した。