Vrai Amour ~秋緒の場合~
「幸せに、なったんだな・・・おめでとう」
「ええ、ありがとう」
そう言って微笑んだ咲子は、俺が見たことのないような幸せそうな顔をしていた。
そして、頬にあてていた手を今度は愛おしそうにおなかに当てる。
「・・・あ、もしかして・・・」
隣で千夏が気づいたように言う。
「ええ、高齢で申し訳ないんだけど、今秋には生まれるの」
幸せそうな咲子の横で、朝比奈はしきりに照れていた。
「それじゃ、私たちはそろそろ・・・」
そう言って、咲子は会場をあとにする。
もう、大丈夫だな・・・
咲子のことは少し気がかりだったので、会えて良かったと思う。
千夏が気にするだろうとは思ったが、10年もずっと一緒にいた人だから
ちゃんとした自分の姿を見せてやりたかった。