Vrai Amour ~秋緒の場合~
その台詞を放ったのは美桜のほう。

美空は生まれたばかりの赤ん坊を抱いて、微笑んでいた。


「美空・・・あの時は悪かったな」


そう言うと美空は静かに首を振った。




「おかげで斗真さんと出会えたから」



美空は微笑みながら、赤ん坊の指先に触れた。

その顔も咲子と同じ、幸せに満ちていて

最後の2つのしこりはふわりと解けて消えていった。




「・・・みんな幸せそうだったね」



最後の知人を送り出して、二人きりになると

ふと千夏がつぶやいた。



「そうだな」

「・・・私たちも、ああなれるかな」


俺は触れていた千夏の指先を引き寄せてぎゅっと握った。


「俺が幸せにしてやる」


そのまま手を引いて向かいあうと、どちらからともなく唇が重なった。

そして、ゆっくりと唇を離すと二人きりになれる場所へと急ぐ。
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