△~triangle~

「バイオリンを弾けなくなった彼女は、名門音楽一家の桜木家には……もう必要ない。……そういう意味ですか?」

「……蓮君」

僕の放った言葉に彼は少し眉を顰めて僕の名前を呼ぶ。

「迷惑を掛けてしまってすまない。必要ならすぐにでも迎えを向かわせる。それにお金も……」

「お金なんかいりません。僕が言っているのはそういう事じゃない。僕は……」

「蓮君……すまないが私も忙しい。綾香が手に負えなくなったならいつでも連絡をくれ。すぐに迎えに行かせよう」

そう言って彼は立ち上がると、そのまま扉へと向かって歩いて行く。
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