△~triangle~
皆は僕の姿を認識したその瞬間、大きく目を見開いてザワザワと声を上げる。
そんな皆の視線を無視して彼は僕の肩にそっと手を触れると、優しい笑みを浮かべて見せた。
それにほんの少し励まされ、グッと拳を握り締めたまま華々しい部屋の中を進んで行く。
すると一番奥の窓際に、一人の少年が立っている姿が目に入った。
その少年はまだ僕の姿に気付かない様で、微かに眉を顰めたままぼんやりと窓から空を見上げている。
少年の視線を追いながらそっと空を見上げると、そこには漆黒の闇の中に光る……美しい満月が見えた。
月の光が少年の色素の薄い茶色い髪を照らし、まるで絵画の様な光景に思わず息を呑む。
……僕はその少年を知っていた。
彼と出会ってしまったのは、本当に運命の悪戯の様な……偶然。