△~triangle~
「起こしちゃってごめんね。まだ寝てていいよ」
二人を起こさない様に小声でそう呟くと、そっとクロの頭を撫でる。
するとクロはまた静かに目を閉じ、スゥスゥと微かな寝息を立て始めた。
そっと視線を移すと、明に腕枕をされたままシロが眠っている姿が見えた。
その愛らしい姿に笑みを浮かべると、枕元に置いてあった携帯電話で時間を確認する。
小さな液晶のデジタル時計は《7時25分》を示していた。
……一番早くに目を覚ましてしまった。
いつもなら早起きな蓮がすでに起きていて、静かに朝食の準備をしている時間だ。
その後に明が起きて、大学に行く用意をしたりして……それからやっと《朝だよ~》と蓮に起こされ私が目を覚ますのがいつもの事。
しかし今日はまだ、二人は目を覚まさない。
「ねぇ、蓮、明……もう7時……」
そこまで言って……微かに目を見開く。
静かに目を閉じ眠っている二人の寝顔を、ただ茫然と見つめ続ける。
……泣い……てる?
二人の閉じられた瞳から……微かに涙が溢れていた。
……ど、どうしよう。
男の人の涙など、生まれてから一度だって見た事がない。
アワアワと視線を泳がせながらどうすればいいのか迷っていると、次の瞬間、明の腕で眠っていたシロが《にゃ~》と鳴いた。
その瞬間、二人が微かに目を開き、眠たそうに瞼を瞬かせる。
「れ、蓮、明、起きて。もう7時半だよ」
そう言って慌てて二人に声を掛けると、二人はモソモソと体を起こした。