△~triangle~
目的も無くブラブラと町を彷徨い、結局特にする事も見つからないまま……部屋へと戻った。
帰り道の途中で寄ったコンビニで、スナック菓子とジュースを買うと、ビニール袋をプラプラと振りながら家へと向かう。
最後の曲がり角を曲がると、立派な15階建てのマンションが姿を現す。
眩しい太陽の光に照らされながらその入口へと近付いて行くと、不意に、一人の男の人の姿が目に留まった。
上品なスーツに身を包んだ、四十代中頃の男性。
オートロックのインターフォンの前で、その男の人は繰り返しボタンを押している様だった。
……留守なのかな。
彼が繰り返しコールボタンを押すが、一向に住人が答える気配がない。
彼はそれから数回コールをすると、小さく溜息を吐き、残念そうに肩を落とした。
その次の瞬間、身を翻した彼と目が合い、そして彼は驚いた様に目を見開いた。
「もしかして……桜木綾香ちゃん?」
その彼の問いにビクッと身を竦めると、彼から離れる様に一歩後ずさる。
「あ、違うよ。僕は記者とかじゃなくて……あの、その……」
そう言って彼は手を振って慌てて弁解すると、困った様に笑って頭を掻いた。