△~triangle~

「えっと……僕は須藤亮介(すどう りょうすけ)」

そう言って彼は胸元から名刺を取り出すと、それを私に向かって差し出した。

《総合商社SUDOUグループ総取締役……須藤亮介》

名刺に書かれたその名前を見て、小さく口を開く。

「……須藤?」

……その名字には覚えがあった。

「もしかして君はここに住んでるの?……二人と一緒に」

「蓮と明を知っているんですか?」

窺う様な彼の問いに思わず質問を返すと、彼はまた困った様に笑った。

「うん、あの二人は僕の息子だからね」

その彼の言葉にポカンと口を開いたまま、彼と名刺を交互に見つめる。

……確かに……似ている。

よく見れば、彼は明によく似ていた。

見た目や背丈は勿論、雰囲気や……笑った顔まで。

「二人のお父さんなんですか?」

「うん……あんまり仲は良くないけどね」

私の問いに彼はそう答えると、自嘲気味に笑って小さく息を吐いた。

「少し話があってここに来たんだけど……二人は今日は出掛けているのかな?」

「はい、明は学校で……蓮もどこかに出掛けてしまいました」

「……そうか」

私のその答えに彼は残念そうに肩を落として、また溜息を吐く。

「で、でも、どうして私の事を知っているんですか?」

「ああ、そうか。君は小さかったからもう覚えていないよね」

私の問いに彼は穏やかな笑みを浮かべると、うんうんと一人で頷いて見せる。
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