△~triangle~
「でも君に会えて嬉しいよ。かなり昔に君を家に招いた事があったけど、僕は仕事で家に居られなくて……しかも結局何も出来ないまま君を帰してしまったからね。ああ、君はもう覚えてないかな」
そう言って彼は首を傾げる私を見てクスクスと笑うと、それから少しだけ真剣な顔をした。
「でも君には本当に感謝している。君のお陰で明は……そして僕も少しだけ救われた様な気がしたよ」
彼は真っ直ぐに私を見つめると、そっと手にしたままの写真を見つめる。
そこには……幼い少年が二人写っている写真が見えた。
その写真を見たその瞬間、思わずグッと息を呑んだ。
「……この写真。明と……蓮……ですよね?」
その微かに震える私の問いに、彼は不思議そうに首を傾げて見せる。
「そうだよ。十年くらい前の写真だけどね」
彼のその答えに、言葉を失った。
彼の手にしている写真に写るその少年を……私は知っていた。
それは勿論、今の彼等を知っているという意味ではない。
黒髪の少し悲しい瞳をした少年。
その姿を見たその瞬間、瞬く間に遠い日の記憶が蘇って行く。
……そう、この写真に写る彼こそが……私が探し続けていた少年。
何度も繰り返し見たあの夢に出てくる、私の初恋の人。