△~triangle~
『もう諦めたら?明は付き合ってる女の子に本気になったりしない。勿論……君にもね』
真っ直ぐに彼女を見つめそう言うと、彼女は俯く顔を上げ僕を見つめた。
『諦められないよ!!ずっと好きだったのに!!やっと付き合えたのに!!どうしたら明は私を好きになってくれるの?どうしたら……』
『いい加減にしてよ。僕の所に来たって何も出来ないよ。決めるのは明だ。僕は関係ない』
興奮する彼女の言葉を遮りそう冷たく答えると、彼女はグッと息を呑んで拳を強く握り締めた。
『……私、知ってるの。明には……好きな人がいるんでしょ?』
酷く冷たく聞こえたその彼女の声に、一瞬だけ身を強張らせる。
それから静かに彼女を見つめると、彼女は僕のその態度に全てを確信したように……歪んだ笑みを浮かべた。
『知ってるんでしょ……蓮。明の好きな人。お願いだから教えてよ』
彼女はまるで泣いている様な笑みを浮かべてそう言うと、それから縋る様に僕の腕に手を触れる。
『君に教えてどうなるの?君に何が出来るの?』
哀れな彼女の姿にズキズキと胸が痛み、しかしそれを無視したまま彼女に問い掛ける。
『嫌なの!!誰かに明を渡すなんて嫌!!浮気ならいくらでも我慢できる!!私の所に戻って来てくれるなら、私は明を許すわ!!』
『君はオカシイよ。どうしてそんなに明がいいの?そんな酷い事をされて、どうして好きでいられるの?』
その僕の問いに彼女は苦しそうに眉を顰め、僕を睨む様に鋭い視線を向ける。
その問いの答えは、聞かなくても僕には分かっていた。
……悲しい程に僕には彼女の心が分かってしまったから。