△~triangle~
「何してんだよ!!」
そう声を上げると、二人は驚いた様に瞳を震わせながら、真っ直ぐに俺を見つめた。
そのまま走り寄ると立ち塞がる様にノラの前に立ち、刺す様に鋭い視線を男に向ける。
「あ、明……今日は学校じゃなかったの?」
後ろからノラの声が聞こえるが、それに答えないまま男を睨みつけた。
男はその視線から目を離さないまま、小さく笑みを浮かべる。
「久しぶりだな。元気そうでよかっ……」
「……コイツに何をした」
男の言葉を遮り冷たくそう言い放つと、男は困った様に笑った。
「何もしていないよ。ただ偶然会ったから昔の話をしていただけだ」
男のその答えに眉を顰め更に表情を険しくする。
「明が心配する様な事は話していない。今日は話があってここに来たんだ」
「蓮に……だろ?」
そう言って嘲笑を浮かべ首を傾げて見せると、男は肩を竦めて深い溜息を吐く。
「いや……本当はお前にも聞いて欲しいんだけど……」
「アンタと話す様な事は何も無い。とっとと帰れ」
男の言葉を聞き終わるよりも早くそう素っ気なく答えると、茫然と立ち尽くすノラの手を掴み、そのままマンションの中へと入って行く。
「ちょ、ちょっと!お父さん……いいの!?話があるって……」
引き摺られる様に歩くノラがそう言って後ろをチラチラと振り返るが、それを無視して手早くオートロックを開くと、そのままマンションの中へと入った。
自動ドアが閉まる音と共に、チラッと後ろを振り返ると、あの男が静かに俺を見つめている姿が見える。
その何故か悲しく見える瞳は俺の胸をざわめかせ、それから逃れる様に早足でマンションの廊下を進んで行った。
そのままエレベーターに乗ると、静かにそのドアが閉められる。
機械の作動音だけが響く狭い空間の中、ノラは困った様に瞳を揺らして俺の様子を窺っていた。