△~triangle~
「蓮は覚えていたんでしょ?だって、あの時……最後に貴方は私の名前を呼んだ。私の事、知っていたんでしょ?……どうして?どうして何も言わなかったの?」
私の縋る様な問い掛けに蓮は何も答えず、ただ私から顔を背けたまま動かない。
「ねぇ蓮。私、ずっと貴方を探してた。会えなくなって、会えなくなったのが信じられなくて……私、ずっとあの公園で貴方を待っていた。教えて?どうして貴方は私を知っていたの?どうして私をココに置いてくれたの?どうして……何も知らない振りをするの?」
「……やめてよ……ノラ」
私の口から放たれる言葉に、蓮は小さく呟いて返すと、クスリと嘲笑を浮かべた。
「君の思い違いだよ。記憶なんて曖昧なものでしょ?ノラが言ってるその人と、昔の僕が似ているだけだよ。それは僕じゃない。……僕じゃないんだよ」
蓮はそう言って笑みを浮かべたまま、首を傾げて見せる。
「どうして?だってあれは……」
そこまで言ったその瞬間、私の唇に……蓮の指が触れた。
私の唇に添えられた人差し指が私の言葉を遮り、ただ真っ直ぐに蓮を見つめる。