△~triangle~
18 決別の予感(明)

「おかえり……明」

そう言って蓮は笑った。

その笑みはいつもと変わらない穏やかな笑みで、そんな彼の姿を見つめたまま茫然とその場に立ち尽くす。

蓮の横ではノラが唇を手で覆ったまま、驚いた様に俺を見つめていた。

「今日のご飯はハンバーグだよ。明……好きでしょ?」

蓮はそう言ってキッチンを指差すと、ニッコリと笑みを見せた。

蓮の指差すその先には、あとはハンバーグを焼くだけで食べられる様に夕食の準備がされている。

それからゆっくりと視線を蓮へと戻すと、蓮はまたニッコリと笑みを浮かべて見せた。

蓮のいつもと変わらない筈のその笑みは俺の胸を酷くざわめかせ、不穏でそして微かな闇の気配を感じ取れる。
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