△~triangle~

「……あ、明」

震える声で小さく名を呼ばれ、そっと俯く顔を上げる。

するとノラは困惑した様に瞳を揺らして、俺の様子を窺っていた。

その彼女の姿に胸が酷く痛み、更に強く拳を握り締める。

……聞こえてしまった彼女の告白。

《私は……蓮が好き》

その彼女の言葉が頭の中に響き、それを振り払う様に小さく首を横に振った。

「ごめん……さっきの話、聞いてた」

その俺の呟きにノラは困った様に視線を泳がせる。

「蓮が好きって……本当なの?」

俺の問いにノラは何か考える様に俯き、それから……コクンと頷いて見せた。

その瞬間、沸々と醜い感情が沸き上がり、しかしそれを必死に抑える様に唇を噛み締めたまま、何とか平常を取り繕う。

そうしなければすぐにでも声を荒げてしまいそうだった。

『どうして……蓮なのか』……と。

ノラが好きな男がよりにもよって……何故《蓮》なのか。

「いつから……蓮を好きだったの?」

俺の擦れたその問いに、ノラは静かに俺を見つめ……それからポツポツと昔の話をしてくれた。
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