△~triangle~

「どうして蓮は……あんな事したのかな」

「あんな事って……キスされた事?」

ノラの呟く様な問いに更に問いを返すと、ノラは不安そうに瞳を揺らす。

「蓮は私が嫌いだって言った。それなのに……」

ノラはそこまで言って口を噤むと、そのまま俯いてしまった。

それから暫く、沈黙が続いた。

広い部屋の真ん中に二人で膝を抱えたまま、静かな時が流れて行く。

「にゃおん」

急に聞こえたその鳴き声に俯く顔をそっと上げると、クロとシロが俺とノラに体を摺り寄せてくる。

それから二匹の猫は俺とノラとの間にゴロンと寝転ぶと、窺う様な瞳で俺達を見つめた。

重苦しい空気とは豪く対照的で、平和的な彼等の姿に……思わず小さく笑みを浮かべる。

するとノラは寝転ぶ猫の頭をそっと撫で、困った様な笑みを浮かべて見せた。

黄緑色のその瞳を見つめたまま、はぁっと大きな溜息を吐く。
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