△~triangle~
「美味しいね……ハンバーグ」
「うん」
ノラの呟きに小さく頷いて返すと、ノラは食事を続けながら静かに俺を見つめた。
「蓮……大丈夫かな」
「……うん」
ノラの窺う様な問いに、また同じ様に頷いて返す。
……それしか出来なかった。
何故なら俺にはもう分かっていた。
このたった一つの俺の……俺達の《居場所》が、すでに失われた事を。
それを俺は知っている。
そして蓮もそれを理解しているだろう。
いつかはこうなる事だった。
それが少し……速まっただけ。
「美味いな……本当に」
微かに震える俺のその呟きに、ノラは食事の手を止め俺を見つめた。
「……明?」
小さく俺を呼んだノラの窺う様な視線を受けながら、恐らくもう二度と食べる事の出来ない……蓮のハンバーグの味を噛み締めていた。