△~triangle~
「じゃ、二人とも元気でね」
準備を終えた蓮はそう言うと、そのまま玄関へと向かって歩いて行こうとする。
「待てよ!!」
明が声を荒げ、まるで逃げる様に部屋を出て行こうとする蓮の腕を掴み引き止めた。
「お前の望みは何だ?お前は一体何がしたい!?」
明の叫ぶ様なその問いに、蓮は少しだけ悲しそうに瞳を揺らし俯き……そして笑った。
「僕の望みは……明と同じだよ」
その蓮の言葉に明はグッと息を呑むと、眉を顰め表情を険しくした。
「それは、須藤家の後継者になる……そういう事?」
冷たく聞こえた明の問いに、蓮は静かに視線を逸らす。
「……そうだよ。悪いけど、明には譲れないかな」
蓮はそう言ってクスリと吐息を漏らすと、困った様に笑って見せた。
そんな蓮の姿を明は暫く見つめていると、それから小さく口を開く。
「でもどうして急に?そんなのに興味無いってずっと……」
「いい加減にしてよ!!」
明の言葉を遮る様に蓮が声を荒げ、その怒声にビクリと身を竦めた。
蓮の怒声など、今まで一度だって聞いた事がない。