△~triangle~
「蓮!!」
咄嗟に彼の名を呼び後を追おうとする私の腕を……明に掴まれ引き止められる。
「……行くな」
その彼の言葉に、ただ静かにゆっくりと……彼を振り返った。
明は私の腕をきつく掴んだまま、俯いている。
「お願いだから……行かないで」
「……あ、明」
まるで泣いている様に見える彼の名を呼び、困惑した様に瞳を揺らす。
「頼むから……行かないでくれ」
明はもう一度そう繰り返すと、縋る様な瞳で私を見つめた。
今にも泣き出してしまいそうな震える彼の瞳から視線を逸らせないまま、ただ茫然と立ち尽くす。
彼の後ろに見える大きな窓を激しくなった雨が叩き、その雨音は《急げ》と私を急かしている様に聞こえた。