△~triangle~
「ノラ、蓮の所に行かないで。お願いだ。お願いだ……ノラ」
震える明のその言葉を聞きながら、ギュッと強く瞳を閉じた。
……私には見えてしまった。
去り際に蓮が……涙を流していた事を。
……蓮が泣いている。
私が泣いている時、いつも蓮が励ましてくれた。
辛い事があった時、悲しい事があった時……傍に居てくれたのは蓮だった。
懐かしく愛しい思い出と共に、選択の答えが浮かび上がった。
……蓮を一人にさせたくない。
「ごめん、明。私……行かなくちゃ」
その言葉と共に明の手を振り払うと、そのまま蓮を追う為に走り出す。
……もう、後ろは振り向けなかった。
何故なら明の悲しい吐息が、聞こえてしまったから。
……ごめんなさい。
そう心の中で繰り返しながら外へと飛び出し、きっとこの雨の中を彷徨っている筈の……悲しい彼の元へと走り続けた。