△~triangle~
「どこに……行くの?」
呼吸が乱れているせいか、それとも緊張しているせいなのか……震えるその彼女の問いには何も答えない。
降りしきる雨の音を聞きながら、ただジッと彼女を見つめる。
「蓮……一緒に帰ろう?」
そう言って彼女は、僕に向かって真っ直ぐに手を差し伸べた。
「……蓮」
ノラは手を差し伸べたまま、まるで諭すかの様に僕の名を呼ぶ。
カタカタと震えるその小さな白い手を見つめたまま、ツキツキと胸が痛むのを感じた。
……ノラは本当に優しい子。
たから余計に……苦しくなる。
どうしてこの子なのだろうか。
僕の心から望む全てのモノを持っているのが……どうしてこの子なのだろう。