△~triangle~

「明を……置いてきたの?」

その僕の呟く様な問いに、ノラは少し悲しそうに瞳を揺らした。

「君は本当に残酷な子だよ。明の気持ちに気付いたんでしょ?それなのに、明を置いて僕を追ってきたりして……今頃きっと、明は泣いてる」

僕のその言葉にノラはグッと息を呑み、強く拳を握り締める。

しかしノラは僕から目を逸らそうとはしなかった。

「放っておけなかった。蓮が……泣いていたから」

ノラはそう言って真っ直ぐに僕を見つめた。

その彼女の瞳に言い表せない様な複雑な感情が渦巻き、ズキズキと胸が痛んだ。

「……どうして……こんな風になっちゃうのかな」

「……え?」

僕の雨音に掻き消されてしまう程に小さな呟きに、ノラが微かに首を傾げる。

それにニッコリと笑みを浮かべて見せると、ノラは困惑した様に瞳を揺らした。
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