△~triangle~
「……ノラ」
縋るかのように私を呼び続ける彼は、まるで小さな子供の様に見えた。
そんな弱い彼の姿に、私の胸は壊れそうになる。
……優しい、優しい明。
そんな彼が私を好きだと言ってくれる。
私が……必要だと言ってくれる。
バイオリンを失い、居場所を失い、未来も、希望すら失った私を……彼は必要だと言ってくれる。
本当は……嬉しかったのかもしれない。
私は誰かに必要とされる事をずっと望んでいた。
……嫌われるのが怖かった。
……必要とされない事が怖かった。
……失う事が怖かった。
だからこの選択がどんなに間違っていると分かっていても、今の私には明を拒む事が出来なかった。
強く彼を抱き締めたまま、そんな考えがグルグルと頭の中を廻り続ける。