△~triangle~
《……あの子を……許してやりなさい》
祖母の最後に言い残した言葉が、頭の中に響く。
僕は……あの人を憎んでいるのだろうか。
僕を捨て、《音楽》を選んだ《彼女》を、僕は憎んでいるのかもしれない。
そんな《彼女》も《音楽》も……そして全てを持っている《あの子》の事も。
「どうしたらいい?答えてよ……おばあちゃん」
ボロボロと涙を零し、擦れた声で呟いたその瞬間、僕の後ろの扉が勢いよく開かれる。
そしてそこに見えたのは、僕が生まれて初めて見る事になる、息を切らせた……《父》の姿だった。